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「ふう…」
何処とも知れぬ小さな戦場で、1人の少女は額に付いた返り血と汗を鎧に包まれた手の甲で拭う。
黒髪黒目の愛らしさのある、まだ10代初めての小柄な少女だ。
彼女は黒い鋼板を黒い鞣し革に合わせた全身鎧にという重装備に身を包み、手には己の身長と同じ長さと己の胸のと同じ幅を持つ巨大で飾り気の無い武骨な鋼の大剣を手にしていた。
そして、その足元には自身が倒した敵の骸が転がっている。
ひきしまった人間によく似た、鋭い牙を持つそれはボガードと呼ばれる蛮族の一種だ。
だが、それは見るも無残に叩き潰され、よく見なければ判別すら難しいほど滅茶苦茶にされている。
それが3体ほど、黒い鎧の少女の回りに転がっていた。
状況から3対1だったと思われるにも関わらず、少女はあまりに一方的にボガードを捩じ伏せていた。間違いなく実力者である。
「普通のボガードだけでしたか。トルーパークラスが出張ると思ったんですけどね。」
少女は大剣を肩に担ぎ直し、戦場を見やる。まだあちこちで小競り合いが続いているようだ。
敵のほとんどが先ほど少女が倒したボガードだったが、ふと戦場の端を見ると、普通のボガードより2回りは体格が大きく、鎧に盾と剛剣で武装したボガードが、普通のボガードを7人引き連れた隊で、人間の騎士達を圧倒し、惨殺していた。
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