第1章

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「本当にあなたじゃあないんですね?」 「違います!俺はアヤメを殺してなんかいない!主任の持って来た花束に彼女の首が!」 「中田さんはあなたと付き合ってたと言っています。」 「そんなバカな!あり得ません。俺が付き合ってたのは、三沢アヤメだし、俺にアヤメを殺す理由が無い。」 「三角関係のもつれじゃあないの?あんた、メールで中田さんに告白してるじゃないか。」 俺はそのメールを見せられた。 付き合ってください。そう引用文に書いてあり、その返信に、私なんか、いいの?年上だし。と書いてあった。 「でっち上げです!確かに俺は、中田主任にメールをしました。だけど、それは飲みのお誘いです。今夜、みんなで飲みに行くんですが、中田主任も付き合ってくださいよ、ってメールしたことがあります。それに対して、この引用で返信が来たから、おかしいなとは思ったけど、歳なんて関係ありませんよ、って確かに返事は送りました。でも、「付き合う」だけ引用されたってたけの話で。だいいち、親しかったら携帯でメールするでしょ?これパソコンメールですよ?業務連絡みたいなもんじゃないですか!俺からのメール見ればわかりますよ、偽装工作だって!」 「それが、あなたからのメールは消されてるんですよ。」 「そんなもの、元メール復元すればわかるじゃないですか。」 「でも、愛してるなんて書くものなのかね?」 「それだって、ジョークですよ。ジョーク。だって、中田主任のほうから、愛してるわよ、なんて送ってきたから、てっきり冗談だと思うじゃないですか。酔っ払ってるなと思って。だからジョークで返したんですよ。愛してるって。だって、俺が23歳で、彼女、50歳ですよ?しかも、あんなダブダブに太ったオバサン。付き合うとかあり得ない。」 他にも彼女のパソコンには、俺との交際のことが綴られているブログの履歴もあった。 もちろんそんなことはあり得ない。 遊園地に行ったのだって、社員旅行だし、確かにジェットコースターを怖がった主任の頭をポンポンとしたこともあったが、あんなことくらいで付き合ったとか言われたんじゃたまったものじゃない。 おやすみメールだって、あまりにしつこいから、おやすみって返しただけだし。 俺はもっと早く、彼女の狂気に気付くべきだったのかもしれない。
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