4人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
彼女は犬と散歩していた。
その道の一つ、紅葉の美しい遊歩道で彼は佇んでいた。
彼は佇み彼女をじっと見続ける。
彼女もまた彼に視線を向け、そのまま彼の側を通り過ぎる。
彼は常にそこにいた。
昨日も一昨日もその前も。
朝も昼も夜も。
風の強い日も雨の日も、それこそ台風が来た日も。
遊歩道の木々が色づく前、新緑を誇っていた時からずっと。
彼の横を通り過ぎて、彼女は視線を彼から犬に向けた。
彼女「ねぇ、イヌ。知ってる?桜の花が美しいのは桜の木の下に死体が埋まっているからなんだって。じゃあ、この木の紅葉が美しいのは何故なのかしらね」
彼女はそう言って、無邪気に笑った。
白い鳥が彼女から逃げるように空に飛び上がる。
彼はその場に佇んで、彼女を見続けていた。
最初のコメントを投稿しよう!