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梁取先生のいない部屋は、なんだか広く感じた。
梁取先生のいないリビング。
梁取先生が座っていないソファ。
冷蔵庫に残された缶ビールを見ると、胸がぎゅっと締め付けられる。
先生に覗かれるんじゃないかと毎回ひやひやしながら入った浴室。
一度も覗かれることはなかったけれど。
先生がいなくて解放感を味わえると思ったのに、寂しくて仕方がない。
先生がいない部屋は、こんなにも静かで、こんなにも寒い。
毎日当たり前だと思っていたことが特別だったのだと気付く。
失ってからじゃないと分からない。
まだ先生を失ってしまったわけではないのに、心にぽっかりと穴が空いたような空虚感。
まるでさよならを暗示しているかのような……
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