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「ありがとうございました。大丈夫ですから」
人形化した私は心のこもっていない声で言った。
心配する藤木先生の顔が閉まるドアに消えていく。
廊下に出るともう暗くなっていた。
生徒の笑い声も消えている。
やっと一人になれた安心感で、幽体離脱していた私はすっと私の心に戻っていく。
すると途端に苦しくなった。
体が悲鳴をあげていた。
先生には婚約者がいたんだ。
その人のことを今でも想っているんだ。
私がどんなに先生を想っても叶うことはないんだ。
そっか、そうだったんだ。
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