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最低だと先生に言いながらも、自分も最低だなと思っていた。
散々お世話になったくせして。
亡くなった婚約者の家具だって、私が家具を持っていなかったから渋々貸したのかもしれないのに。
でも感情が追い付いていかなくて、ただ涙が溢れてくるだけで素直になることができなかった。
「……今までありがとう、先生」
絞り出すように言った感謝の言葉も、ぶっきら棒で感情がこもっていないように聞こえた。
これが精一杯。
今の私の、精一杯の感謝の言葉。
「これ、返す」
合い鍵を見せると、先生は何も言わずに受け取った。
鼻の奥がツンとする。
これで最後。
もうここに来ることはないんだ……
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