俺の彼女は羽生くんのファン!

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…*…*…*…*…*…*…*…*…  アパートの駐車場にバイクを止め、二階の自分の部屋を見上げた。電気が点いている。合い鍵を使って先に彼女がいる家に帰るってシチュエーションは好きだ。「ただいま」「おかえり」なんて幸せの象徴じゃないか。  ハンドルに掛けていたコンビニの小さな袋を手に取り足音が響く古びた階段を上がる。  …………  …………あれ?  玄関が開いてねえ。  いつもならバイクの音や足音に気づいて内から鍵を開けてくれるのに。  フライパンとか揚げ物の音でバイクがわかんなかったのかな。もしかしてクソを頑張ってんのかもしんない。便秘便秘言ってるからクソが出るのは歓迎だ。  ドアを叩こうとした手をフルフェイスのメットに突っ込み、今入れたばかりの鍵を掴んだ。 「ただいまー」  返事が無い。  おそらく便所だろう。あんな狭い場所で声を出すと近所に聞こえるから恥ずかしいとか言ってたし。  やたらとチャリチャリ言う鍵を玄関の壁フックに掛け、白い靴箱の上にメットを置く。たたきにちょこんと存在している彼女のスニーカーの横にくっつけながら靴を脱ぎ、左手にあるトイレのドアに向かって話し掛けた。 「ただいまー。腹へっちゃっててさー」 「あっ! おかえりー、ゴメン気づかなかった!」  あれっ、部屋の奥の方で返事?  クソじゃなかったんだ。じゃあ料理に気を取られて……。  あらら? そういや帰宅男子の楽しみ『部屋に漂う料理の良い香り』が微塵もしねえ。  厚手のジップパーカーを脱ぎつつ部屋の奥へと進みながら一抹の不安を明るく口にした。 「あのさ、もう腹減りすぎてさー。晩飯なんだろなー、俺さー、お前が得意な鶏の…………近っ!」  テレビの前で正座をしている彼女と思いっきり目があった。
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