俺の彼女は羽生くんのファン!

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「えっ、片足でボールキャッチ?」 「そう! ねえ立って?」  最後の一口が……。  まあ、なんか喧嘩を売られた気分だし、簡単に出来そうだし。仕方ねえ、やってやるか。テーブルに両手をつき、ゆっくりと立ち上がった。  ボールになるものを……そうブツブツ言いながら彼女が手にしたのはティッシュ箱。  現役バリバリってワケじゃねえけど、今でも俺は月に数回空手道場に通っている。しかも蹴りなんてのは常に片足立ちだぞ、バランス能力には自信がある。羽生くんだけしか出来ないトレーニングじゃない。楽勝だろ。  右足の膝を曲げて踵を浮かせた。床を掴むように左足の指に力を込め、手の平を上に向けてカモンカモン。 「まかせろ来い、全部成功させてやる」 「えーっ、難しいと思うよ?」 「いや、出来ると思うよ」 「バランスを崩して両足をついたらダメなんだからね」 「うん。とりあえずちゃんと届くように投げてみ」  カーテンの側にて、安定の片足立ち真っ最中の俺。  出来るの、無理でしょうと、怪訝そうな表情で向かい合う彼女。  ラグビーボールみたく小脇に抱え持つティッシュ箱が彼女の手元を離れ、フワリと宙を舞いながら俺の元へとやってきた。  ガシッ。ほら片足のままでキャッチ出来た。だから片足を軸にして戦う競技ってのは同じ分類なんだからこれくらい。  膝を軽く曲げただけの右足を高く上げ、上段の位置で蹴りを入れる仕草を得意気に披露。それでも鉄壁の片足立ちを持続させ『してやったり』と言わんばかりに破顔した。 「な、出来たろ? 羽生くんは片足でジャンプして片足で着地するからこのトレーニングをしてたと思うけど、空手をやってる奴も片足でバランスは当たり前に出来」  ちっ。 「えっ……今なんか言った……?」 「ねえ、やっぱりティッシュの箱は軽すぎたと思わない?」 「あ、うん、まあ、そりゃそうかも……」 「ねえねえ、これはどう?」 「おい、その枕はデカすぎないか? 明らかにビッグサイズだし重さの反動でバランスが……」 「ふふふ。無理? やっぱり無理?」 「んにゃ大丈夫、出来る……かな」  ちっ。  なななななんだ!?  さっきから舌打ちが聞こえるんですけど!  一抹の不安や恐怖が無邪気に片足立ちをしている俺に襲いかかる。
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