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 ただ、その中に小さな願望が眠っていた事に気がついたのは、千歳の返事を待って居る最中だった。「自分で買って、気に入っているからつけているのだ」と。そんな類の答えを期待している自分が居た。それが更なる後悔に変わる事は予想出来ていたはずだ。それなのに、千歳の口から出た言葉に、ぐしゃり、と。まるで体内を掴まれるような痛みに、真浩は―― 「ああ。……大切な人から、貰ったものだからな」  その時の千歳の悲しそうな笑顔を、真浩は一生忘れられる事はないだろう。
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