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私の彼は……
「わっ!」
「おっと」
小さな段差に足を取られる。転びかけた私の前にスッと男の人の体が現れ抱き止めてくれる、不意に感じる彼の体温に鼓動が速まって、慌ててしまって体を離してしまう。いま私はどんな顔をしているだろう。
「大丈夫? ほら、掴まって?」
「あ、ありがとう……ひゃっ」
頬に当てていた手を伸ばし彼の手を掴むと、突然引き寄せられ、抱き締められる。
「な、なっ、な!」
「ふふっ、これでもう躓いたりしないね」
見上げれば満面の笑顔。ヤバい、顔が熱い。それを見られるのが恥ずかしくて俯いてしまう。上からは気遣うような控えめな笑い声。
彼に包まれて歩く夜の街は、私を惑わすように揺らめく。普段は目に痛い街のネオンも幻想的にふわふわと揺らめき、私を夢の世界へ誘っていく――
「……はっ」
ピピピ、という毎朝の携帯のアラーム音に、首筋を押さえて飛び起きる。窓からの日差しが部屋を明るく照らしている。……朝!?
「やばっ、バイト遅れちゃう!」
慌ててベッドから跳ね出て部屋から出て、彼の家……屋敷から飛び出す。急いで家に帰らないと……!
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