第一章

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少年は公園内を歩きながら項垂れる。 原因は明確だ。 運命の人が分かる、と評判の占い師に会ってきたのだが、5千円もしたくせに酷い占いだったからである。 「わっ」と少年は、突然鳴り響いた、鳥が羽ばたく音に驚いて、振り向いた。 鳩だ。その近くには犬を連れた少女がいる。 飛ぶ姿が好きなのか、その少女は嬉しそうに鳩が飛び去る度に、その姿を目で追っていた。 そして、少年は占い師の言葉を思い出す。 鳩ですよ、鳩。 そのふざけた占い結果に、そういうこと?と今は胸を高鳴らされる。 もしも。 もしもだ。 彼女がこちらを振り向いたのなら。 振り向いて自分を見たのなら。 声を掛けよう。 少年はそう決めた。 振り向け。 振り向け。 「振り向け」 つい口に出てしまったが、少女には届かない。 が、その声に反応したかのように、少女の目の前にいる一羽の鳩が、少年目掛けて羽ばたいた。
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