第1章

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 例えば今、私の目の前にナイフがあったとしたら……。  そのナイフは軍人さんが使うようなゴツくて肉厚のやつで、峰の部分にはキョロちゃんのお腹の模様みたいなギザギザがついてるの。  手に取った瞬間、ズシッときそうな感じのそのナイフを、もしも、私が学校指定の鞄にこっそり潜ませておいて……。  ……ううん。やっぱり、鞄じゃなくてセーラー服のスカートのところに外からは見えないように引っ掛けておいて、それで、そのまま一日を過ごしたとしたら。  きっと、いつもよりも心拍数高めのスリリングな時間を過ごせる事受け合いよね。  あっ、でも、もしもそんなナイフなんて隠し持ってたら、絶対に一回くらい使ってみたくなるわ。  とりあえず何か切りつけてみたいし、実用的な使い方じゃなくても、格好つけて振り回すくらいはしてみたくなるもの。  けどまぁ、ナイフをどう使うかはともかく、人に見られないように注意だけはしとかないと危険だわ。  明らかに銃刀法違反だし、先生に見つかりでもしたら確実に補導は免れないでしょうしね。  例えば今この瞬間に、私が剣と魔法のファンタジーの世界に迷い込んだとしたら……。  とりあえず、まずはモンスターとか野盗にはエンカウントしないように気を付けなきゃね。  ゲームとか携帯小説なんかだと、だいたいその世界の神様だったり精霊だったりが親切に助けてくれるご都合的な展開がよくあるけど、あれって実際には言葉も文化も分からない遠い世界の隅っこに置き去りにされるみたいなものよね。  魔法とか、異世界での冒険とかを楽しむ前に、まずは途方もない孤独との戦いが待ってるでしょ?  その孤独に打ち勝っても、次は逃れられない現実が待ってて、現実を克服しても、次は何をしたらいいのか分からなくなるわ。  魔王を倒せばいいの? そもそも魔王なんているのかしら?  ううん、もしかしたら、私が魔王になるシナリオかもしれないわよね。  もしも魔王になれたら、とりあえず全ての敵対勢力を制圧してから、魔王の名の下に世界を一つの国として統一して……。  それから、魔王権限で国中の可愛い女の子達を魔王の城に集めてハーレムとかやってみたいわ。  これって想像したら結構魔王っぽいわよね。  ふはは! くるしゅうない、ちこうよれ。  よいではないか、よいではないか~。
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