第1章

3/3
前へ
/3ページ
次へ
 ……とんだエロ魔王だわ。  例えば、もしも私が透明人間になったら……。  とりあえず、『服だけ宙に浮いて動いてる』みたいな状態は避けるために、身に着けてる衣服は全部脱いでから、こっそり近所の保育園に忍び込んでみたいわ。  それで、おえかきの時間とか、お昼寝の時間中の子ども達の中にそっと入っていって、色々いたずらして、その時のちっちゃい子達の反応を見て楽しみたいわね。  うん。ちっちゃい子特有の可愛い反応をいっぱい楽しめそう!  うへへへぇ。    ……あっ。でも、これって面白いからってやりすぎちゃうと、絶対にバチが当たるパターンのハプニングよね。  もう二度と元に戻らなくなっちゃうとか、逆に犯行の途中で透明化が解けちゃって、社会的に死んじゃうとか……。  それとも、透明人間が意図的に起こしてるポルターガイストだってバレちゃって、警察に捕まえられちゃって、それで、『いたずらを内緒にして欲しかったらおとなしく言う事を聞け』とかって迫られて、透明なままマニアックなお仕置きをされちゃうみたいな展開に……。  トン、トン。  「えっ?」  「……おい。お前、さっきから心の声が言葉に出てるぞ」  「っ……。う、あっ、あはは……。何言いってるのかなー? そんなわけないでしょ――」  「ナイフとか、剣と魔法のファンタジーとか、透明人間とか、ずいぶんとまぁ楽しそうな事で――」  「きゃあああああああああああ!?」  「おい、落ち着けよ! 今授業中だぞ!?」  えっ、もしかして今までの私の想像、全部口に出てたの? え、嘘でしょ!?   やばいやばいやばい! と、とにかく一回逃げないと……。  「せ、先生! なんか急におなかが痛くなったので保健室で休んで来ます!?」    「え、お、おい! 待てよ! ……って、もういっちゃったし」  ため息と共に、俺は走り去る彼女の後姿を見送りつつ、あの子が妄想中に浮かべていた笑顔を脳裏に思い浮かべた。    今さっきは醜態を晒したものの、彼女は、あれで普段は品行方正な女子生徒なのだ。    おまけに、頭脳明晰で容姿端麗。  運動神経もいいクラスの人気者なのだが、その実、変態じみた妄想癖を抱えた難儀な人間である。  ……そして、この学校に入学した当初から俺の憧れる女の子だ。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加