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「……ちょっと、要くん笑いすぎ!!」
「ゴメン。……だって、予想以上だったから」
式場から逃げ出した私は、要くんの仕事用のバンに乗せられて自分の部屋へ帰って来た。
ただでさえ仕事が忙しい上に、絵の買い付けで数週間に渡り留守にしていた私の部屋は、見るも無残な状況――はっきり言って、ぐちゃぐちゃだった。
「……夏希さんって、結構何事にも無頓着?」
「違うわよ! 仕事が忙しくて家事にまで手が回らないの! ……そんなことより要くん、仕事に戻らなくていいの?」
「うん。さっきのとこで配達最後だったから、今日はもう大丈夫」
言うなり要くんはキッチンへ行き、溜まっていた食器を勝手に洗い始めた。
「ちょっと、いくら散らかってるからってそんなことしなくていいから!」
要くんが持っている泡だらけのスポンジを取り上げようと手を伸ばすと、彼は瞬時にスポンジを絞り、その手を高々と上げた。奪い取ろうと私が手を伸ばしても、背の高い彼には届かない。
「僕がやるから。そんなことより、夏希さん顔洗いに行ったら? 目のまわりパンダみたいだよ」
「うそっ!?」
慌てて洗面所に駆け込むと、不格好なパンダ女が鏡を前に、頬に両手を当て叫んでいた。
「なにこれ、ひどすぎる!!」
私は両手にメイク落としをたっぷり乗せると、顔中に滲んだメイクをざぶざぶと洗い落とした。
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