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「要くん、冷蔵庫の中に頭突っ込んで何してるの?」
「夏希さん、あれだけ泣いたからお腹空いたでしょ? 僕がごはん作ってあげる。外に食べに出てもいいけど帰ったばっかだし。それに夏希さん、そんな気分でもないでしょ?」
そう言ってシンクの下から包丁を取り出すと、冷蔵庫に残っていたらしい野菜をリズミカルに刻んでいく。
「えっ、ちょっと。そんなことまでしなくてい――」
再び要くんの手を止めようと近づくと、空っぽのお腹が盛大に音を立てた。
「……体は正直だね、夏希さん」
わざと意味ありげな言葉を呟くと、要くんは肩を揺らして笑った。
「いいから。夏希さんはゆっくり座ってて」
「……はい」
あまりの空きっ腹具合に白旗を上げた私は、要くんに料理を任せて、大人しくリビングへ消えた。
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