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「あのね要くん、画廊の経営なんてしてるから、私がお金持ってるって思ってるのかもしれないけど……。私、全然よ」
私が言うと、要くんは一瞬きょとんと眼を丸めて、不機嫌そうに眉間にしわを寄せた。
「ひどいなあ、夏希さん。僕、お金目当てなんかじゃないよ」
要くんは、捨てられた子犬のような目で私を見つめながら手を伸ばすと、私の目の下を擦った。突然触れられて、身体が硬直してしまう。
「あ、あの……要くん?」
ようやく絞り出した声に要くんはふっと微笑むと、ゆっくりと手を離した。
「そんなんじゃないよ。夏希さん、『flower parc』 でも疲れた顔してること多いし。あまり眠れてないのかとかご飯食べてないのかとか、僕いっつも思ってた」
「……そんな、ただ単に忙しいだけよ」
「うん。だから心配してる、いつも」
「要くん……」
あんなに散々泣いたのに、要くんに優しく気遣われて再びじわりと涙が浮かぶ。
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