『明け方の眠り姫』

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 今朝は、この冬一番の冷え込みだった。夜の間に降り積もった雪は、昼を過ぎても融けることなく残っている。寒空の下、雪に足元を取られないように気を付けながら、私は家までの道を急いでいた。  休日であったにもかかわらず、急にお客様に呼び出された私は、朝からずっと家を空けていた。解放されたときは、とっくにお昼を回っていた。  約束があるわけじゃない。でも要くんは、今日私が休みだったことを知っている。  マンションの前で、置き去りをくらったワンコみたいな顔をして要くんが待っているような気がして、私はなんとか歩く速度を上げた。  道路を挟んでマンションの向かいにある公園の前を通ったときだった。 「要くん!!」  体中雪まみれで、鼻先を真っ赤にして雪だるまを作っている要くんを見つけた。 「夏希さん、おかえり」  要くんは私を見つけると、満面の笑みで私に向かって手招きした。 「……なにやってんの」 「暇だし、冷えるから運動がてら雪だるま作ってた」  どこから持ってきたのか、雪だるまにはちゃんとニンジンの鼻がついていて、突き刺した木の枝には手袋でつけてあった。どうやら要くんは、自分の手袋を雪だるまに譲ってしまったらしい。
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