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「ちょっと……私こんな本気の雪ダルマ初めて見たよ」
「夏希さんを驚かせたくて僕頑張ったもん。びっくりしたでしょ?」
そう言って要くんは、キラキラした目で私の顔を覗き込んだ。
「うん、びっくりした」
「やったね」
私が素直に驚くと、要くんは悪戯が成功した子どものように破顔した。
この寒い中、この子は一体何をやってるんだろう。ずっと雪に触れていたせいで、手のひらまで真っ赤になっている。手を取ると、氷のように冷たい。
私を驚かせたいからって、こんなに寒い日にここまで夢中になれるものなの?
「はあーっ、寒いね! 夏希さん、今日は鍋にしようね」
「要くん、買い物してきたの?」
よく見ると、ベンチに近くのスーパーの袋が置いてある。雪だるまに刺したニンジンはそこで買ってきたんだろう。
「うん。夏希さんと鍋つつきながら昼から雪見酒もいいなあって思って」
無邪気に笑う要くんを見ていると、なぜだかふいに泣きたくなった。
「こんなに冷たくなって……いつから待ってたのよ、馬鹿。鍋なんていつでもできるのに」
「だって夏希さん、ほっといたらカップ麺しか食べなさそうだし。僕見たよ、またストック買い込んでたでしょ」
「……いいじゃない、カップ麺でも。ラーメン好きなんだもん。早く帰ろ。私お腹空いた!」
可愛くないセリフを吐いて、要くんの先を歩く。瞳に滲んだ涙を、彼に見られたくはなかったから。
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