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――彼との付き合いは、もう十年以上になる。
画廊を開いていた父親の影響で、子供の頃から絵を描くことが好きだった私は、地元の高校の美術コースを卒業後、東京にある美大の絵画科に進んだ。
私は物心ついたときから、将来自分は絵描きになるのだと信じていた。だけど入学して一年も経たないうちに、自分の才能に限界を感じ始めた。
慣れない都会で、一向に上達しない絵と向き合う日々。毎日課題をこなすのに精一杯で、気がついたときには絵を描くことが苦痛以外の何ものでもなくなっていた。
もういっそ退学しようかと悩んでいた頃出会ったのが、同じ絵画科の二期先輩だった彼、三浦和史だった。
まだ学生の身でありながら国内の数々の展覧会で受賞歴を持つ彼は、美術界でも注目の存在で、もちろん私も彼の名前を知っていた。
初めて和史と話をしたのは、学内に飾られていた彼の卒業制作作品の前でだった。
和史に作品の感想を求められた私は、作品を見て感じたことをそのまま彼に告げた。私の感想は、彼が作品に込めたものを的確に読み取っていたらしい。
『君は本質を見極める目を持っているのかもしれないね』
彼のその一言がきっかけになった。
画家の道を諦め、父の画廊を継ぐことにした私は、退学はせずそのまま大学に残り勉強を続けた。
和史は卒業後、東京には残らず地元に戻ってアトリエを構えると聞いていた。彼と私は、偶然にも同郷だった。
いつか自分の画廊で三浦和史の絵を売る。それが私の、新しい目標になった。
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