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テーブルに頬杖をつき、ぼんやりと外の景色を眺めていた私は、綾ちゃんが運んできてくれたばかりの珈琲を一口、口に含んだ。
「……あっつ!」
熱い液体が喉を焼き、空っぽの胃を刺激する。
「うわ。夏希さん、大丈夫?」
「大丈夫よ……って、またあなたなの?」
差し出されたナプキンを取ろうとして、慌ててその手を引っ込めた。
目の前には、さらさらの前髪から覗くアーモンドアイ。男のくせに、見ているこっちが嫌になるくらい綺麗で整った顔。
「うん、今日も来たよ。おはよう夏希さん」
断りもなしに私の向かいの席に座るのは、藤井 要くん。年は確か二十六歳。
どういうわけか、私は最近この男の子に付きまとわれている。
「……あなたね、毎日毎日どんだけ暇なの?」
要君はテーブルに頬杖をつき、私の顔を見つめて笑顔を浮かべている。昨日も一昨日も、その前からずっと、彼はこの時間になるとやって来て、勝手に私の向かいの席に座っている。
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