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「暇じゃないよ。この後も仕事だし」
「あら奇遇、私もこの後仕事なの。忙しいから、食べたらすぐに仕事に行くわよ、私」
「あれ、画廊のオープンの時間までまだあるのに。夏希さん、今忙しいの? ひょっとしてまた個展とか? 準備手伝うよ僕、いくらでも」
要くんとの出会いは、夏にうちの画廊で開催した個展だった。彼は、絵の搬入や会場設営のために雇ったアルバイトの一人だった。
「あのね、そんなにしょっちゅう個展が出来れば私も苦労しないわよ! それでなくても仕事はいくらでもあるんだから。要くんのお守りしてる余裕なんて、私にはないの」
「そんなあ。夏希さん、つれないなあ」
私がこんなふうに冷たくあしらっても、要くんはちっともダメージを受けることなくにこにこしている。見た目はいいんだし、黙っていればそれなりにいい男なんだけどな。
結局今日も、要くんは私がモーニングを食べる間ずっとその席に座っていた。
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