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見上げた空には、どこまでも穏やかなブルーが続いていた。
和史と、彼の恋人――涼香さんの結婚式の日。冬晴れの空の下、私は長年の想いに別れを告げた。
ガーデンの中央では、永遠の誓いを交わした二人が大勢の招待客たちに取り囲まれていた。これから、ブーケトスがはじまるのだ。
新郎側の友人だろう、数人の男性が美しい花嫁を得た花婿をからかうと、彼は照れくさそうな笑みを浮かべた。
出会って十年近く経つけれど、和史のあんな表情を見るのは初めてだ。私が知らない和史を、涼香さんはきっともっとたくさん知っているのだろう。
これ以上二人を見ているのがつらくて、私は視線を空に移した。
「これ……雪?」
そのとき、一点の曇りもない真っ青な空から、白い花びらのようなものがふわりふわりと舞い落ちてきた。
たしか風花、というんだっけ。その不思議な光景をしばらく眺め、再び二人に視線を戻した。
彼が幸せになって良かった。心からそう思うのに、気づけば私は涙を流していた。
あんなに和史の幸せを願ってきたのに、今は彼の顔を見るのがつらい。
賑やかなパーティ会場を抜け出して、誰もいない風花舞う木陰で、私は次々に溢れてくる涙をそのままに立ち尽くしていた。
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