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「……夏希さん?」
こんなときに、私のあとを追う人など誰もいないと思って油断していた。
「え……なんでここに?」
涙で濡れたままの顔を上げると、そこには要くんがいた。
「なんでって、仕事で。ここにシャンパン卸しに来たんです。……うちの実家、酒屋だから」
要くんは私の顔をしばらく見つめると、続けてガーデンで開かれている披露宴に目をやった。
「ふーん、そういうこと?」
「……なにが」
要くんはそれには答えず、腰を屈めてはまた私の顔を覗き込む。こんな近距離で若い子に見られるのが耐え切れなくて、私は思いっきり顔を背けた。
「なにやってんの」
いい年して泣いてるところなんて絶対見られたくないのに、要くんは私がどんなに顔を逸らしてもついてくる。
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