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なんて女だろう?大学生の気楽な身の上とは云えど平日から酒を飲むなんて…!けしからんよ?けしからんけしからん。
しかし今は適切な処置が肝要である。彼女はまだ酒初心者であり、飲み方というものを知らない。そして起きた後に常と変わらぬ日常を送る為にはその対処を怠ってはならないのだ。
見た所、瀬戸雨はウイスキーをストレートで飲んでいたようだ。豪気な女だ。だが、このままでは肝臓に対するダメージ過多により起きる事も儘ならないだろう。大学生活ならそれでも良いものの、私の要件を満たす為には出来れば早めに起きて欲しいのだ。
そう、恋の力だ。
彼女を元の態勢へと戻して、冷蔵庫から2リットル入りのミネラルウォーターを取り出す。飲んだ量から察するにこの程度で十二分だろう。
肩に手を掛け眠っている彼女の上半身を起こし、口からミネラルウォーターを流し込む。
「ほら、飲むがいい」
「…ごふっ」
「ごふっ。では無い。飲むのだ」
「ごふっ…」
ごふごふと噎せながらも瀬戸雨はミネラルウォーターを美味しそうに飲んだ。いや、美味しそうというのは私の想像力が発揮されたかもしれないが、兎に角、飲んだ。
口から少々水が溢れて、彼女のTシャツは濡れてなかなかにセクシーになった。1リットルほど慈愛顔をして水を注いだのだが、それ以上は入っていかず溢れるばかりなので私は仕方なくこの献身的な行為を止めて、彼女を近くのソファーへと運んだのであった。
本来ならばベッドへと送り届けるのが通常だろう。しかしここは自分の要件を優先させて、ソファーへと運ぶに止めた。決して私が貧弱な肉体の持ち主でベッドまでの距離をたかが40kg強の彼女を運べぬ訳では無い。ありえない話だ。
しかし彼女が起きるまでは私の要件は果たせない…。どうしたものか…。っ!
辺りを見回すと半分以上は残っているウイスキーのボトルとミネラルウォーターがあった。
「ふぅ。やれやれだ。とりあえずはこれを飲んで時間を潰すしかあるまい。酒は飲みたい時に飲むから楽しいのであり、こんな時間潰しに飲むなんて悪酔いする予感しかしない。…むっ。こ、これはジャックダニエルではないかっ!この小娘このようなものを飲んでいるとはけしからんなぁ…。成敗!」
私は成敗の名の下にジャックダニエルの水割りを飲み始めたのである。あくまで成敗である。
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