恋文

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 そんな私は今ではスマートなハムレットと成り、瀬戸雨はペン習字を生業として実家から出た事により漸く改名と相成った次第である。ちなみに瀬戸雨芽雨が行っているのは経済大学だと云う。  夢への最速最短ルートである。  「改名した今となっては、いや、もう仕事も出来たのだから、大学へ行く必要無いんだけどねぇ~」  「ううむ…。それもそうだな…」  「さっき言った受講料を袖にされてわたしが立腹して、お酒を飲んだのは嘘でした。実は改名後の嬉しさに震えていたのです」  「何と…」  「嬉しさ余って自分の名前を沢山書いてしまいました」  そうして芽雨はテーブルの下から原稿用紙(…50枚以上はある)を私に渡す。  前半に瀬戸雨卵子。後半に瀬戸雨芽雨。  と、何度も何度も繰り返し書かれていた。彼女の祝福された文字でもそれはまるで呪いのようだった。  が、それには彼女なりの決別の意味があるのだろう。  で、私は「おめでとう。とでも言っておこうか?」  「いちいち格好付けないっ!」  きゃはは。と笑い、彼女は私からその原稿用紙の前半部を引っ手繰るようにして、今度はそれを破っては宙に散らした。  原稿用紙の紙吹雪がとても綺麗に見えた。
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