568人が本棚に入れています
本棚に追加
/201ページ
「んっ・・・」
抜く時でさえ感じるらしい。若いと多感なのかな?ま、どっちでもいいけど。
僕は身だしなみを整えさっさと路地から出た。
後ろから少年が声をかけてくる、またやろうとかそんな事だったと思う。
(ごめんね、君のことなんてもう顔も覚えてないから。)
振り返らずその場を立ち去った。
僕は時々こうやって欲求を発散している。
店を出てすぐの裏道を進むと“蛇の住む路地”につくのだが、ここには僕みたいな奴がうろついてていい発散場になってる。
=今日も楽しそうだなあ=
路地を戻ってると、いつもの声が聞こえてくる。僕にとり憑いてる悪魔の声だ。
「うん、楽しかった、意外にね」
(ルトのこと考えながら出せたし)
いつものように悪魔は姿を見せない。笑い声だけが響いてくる。行為後特有の脱力感を感じながらため息をついた。
「はあ~」
=なんだよ?物足りなさそうだな。もう一人つかまえるか?=
悪魔が楽しそうに提案してくる。
「そうしてもいいけど」
――乾く、もっと欲しい
でも、この乾きはルトにしか埋められない。
何人やっても変わらない。この乾きについては実はもうすでに実施済みで、10人ぐらい連続でやったことがあった。
その時も、最後までこの気持ちは消えなかった。
「・・・今日は疲れたかな」
=おっさんかよ=
「いーの」
昔から何も得意なことはなかった。
だけど、ルトについては、誰よりも好きでいる自信がある。
きっとあのバンでさえも上回る程に。
そう思うと、優越感を感じた。
(明日、何かお土産持ってルトに会いに行こう、あ、それかプレゼントを贈ろうか?でも普通に渡しても受け取らないだろうし・・・ふふ、楽しみだな)
ルトのことを考えながら僕は路地を抜け、店へと戻った。
その足取りは軽く
悪魔の声も聞こえなくなっていた。
最初のコメントを投稿しよう!