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―――昔からそうだった
「バン・・・やめときなよ、危ないよ」
「ハハハッこんなの楽勝だって!シータはそこで待ってればいいからな!」
そう言ってバンは、あっという間に木のてっぺん(公園で一番高い木の)まで登り詰めてしまう。僕はただ見上げるだけしかできない・・・いや、見ているだけなのに震えてくる始末だ。
情けなさすぎて・・・でも何もできなくて。
「おーい!シーター!見てるかあ?」
「見えてる!やっぱりバンはすごいね!」
精一杯取り繕って答える。
バンに嫉妬してる自分がいるなんて知られたら、・・・それこそ恥ずかしくて死んでしまうだろう。
何でも出来てしまう友人。
それを見てるしかない
そんな自分が嫌だった。
「ずっと気になってたんだけど、シータとバンはどうゆう知り合いなんだ?」
「え?普通に幼馴染みだぞ」
バンが当たり前のようにルトに答える。そう、僕達は幼馴染みだ。・・・バンにとっては。
(僕にとっちゃ嫌味な存在だよ)
「・・・バン、こんな変人と付き合ってて変人扱いされてないか」
「ははは、大丈夫だよ」
「ならいいが・・・」
ルトが口を尖らせて言う。
そんな姿も愛らしい。
今ルトたちは僕のアルバイト先である店に来ていた。単に昼をとりにきただけだろうがルトの顔がみれたのは嬉しい。
僕は二人の前に頼まれた料理を置く。
そして口を開いた。
「ひどいなあ、まるで僕を害虫のように扱ってて~いくら僕でも傷つくよー?」
「いや、お前すんごい幸せそうに笑ってるじゃん」
「あ、ばれた?」
「・・・・」
「ははは!」
バンが景気よく笑った。
ルトはその笑顔をみて、今までのしかめっ面をほどき、ふっとつられ笑みをこぼした。
――まただ。
僕のほしいもの、作りたいもの、やりたいこと。
すべてバンがやってしまう。
拳を握りしめ、感情がおさえられない顔を下に向け隠した。追いうちのように前から楽しそうな二人の声が聞こえ、僕はより強く拳を握りしめた。
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