第1章

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 卒業時点で付き合って何年も経っていたが、瑠璃の親が再婚をくり返して親権を押しつけ合い、気付けば他人と他人の家の子になっていた、なんて知らなかった。苗字は出会ったころのままだったし。  家族の話をしたがらないのも当然だった。  そんな瑠璃に「今日からお前の職場はここだ」と、この手狭な家に引きこもっていられる正当な理由を与えたのは、なにを隠そう俺である。  三食おやつ昼寝つき。シフト自由。誕生日だけは特別待遇。ただし給料は雀の涙ほどになる、と。  なにせ家にさえいれば、昔となんら変わらない生活が送れる。外に出られるようにならなければ、と自分を追いこむことこそが、別の心の病を引き起こす原因だろう。
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