第1章

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 結婚も考えての同棲だったが、現在は入籍以外のことは済んでいる。瑠璃がネットで選んだ指輪を俺が実店舗で品定めして、サイズ合わせやらなんやらといった、意外と大変だった手順をこなしたのは、随分前の話になる。  あとはトラウマを克服し、俺と一緒に婚姻届を提出しにいけるようになるだけだ。  これは彼女本人の意思であり、二年かけた努力の甲斐あって、ベランダには出られるようになった。  陽の光を浴びないと心が病んでいくなんて話もあるが、天気のいい日は恐る恐るだけど光合成を始めた、なんて発言があってから一年後には、ベランダにも出られなかったころのジメジメした姿はなかった。  現在では誕生日プレゼントの服を着て、狭いベランダにコンパクトなチェアを置き、足元には安いフットバス。そんな状態で読書ができるようになった。  所詮噂話だと思っていたが、まったく浴びない生活よりはいいのだろう。
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