第1章

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 目標にはまだ遠い位置にいるが、その代わりに内職を始めた。まだ雀の涙がふたしずくになった程度だが、もともと人間としてトップクラスのポテンシャルを持っていたのもあり、軌道に乗れば俺より収入が多くなるだろう。これからフリーランス特有の悩みである縁をどう作っていくかだ。  悔しいが、昔からその気はあった。俺は量産型の凡人で、瑠璃は高みを目指せる優秀な人材なのだ。  家から出られないのならば、家で金になる仕事をすればいい。  ひとまずそこまで辿りつけたのは大きいのではないかなと、勝手に、ひそやかに思っている。  ご近所さんからは、俺が女をペット扱いしているだとかなんだとか、よく噂されているらしい。それを、家の中限定の気ままな暮らしをひがんでいるだけだと、ふたりして割り切ってしまえたのも大きい。  けれど思い出したら少し腹が立ち、ついついおたまの底でじゃがいもを潰してしまった。
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