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午後練が終わる頃には、暑さも幾分落ちついた。
部員のいなくなったプール。
その水面は、さざ波一つ立ってない。
僕はデッキブラシを動かす手を止め、なんとはなしにプールへ近づいた。
ペタペタ。ペタペタ。自分の足音が面白い。
身を乗りだして覗いてみる。鏡みたいな水面に、ポカンと口を開けた自分の顔が映ってる。
水面をかき乱そうと、そっと右足を伸ばして……。
「そこのナルシスト!」
「おわっ」
背後からの声に驚いてバランスを崩した。
「おっ、おぉっ。ちょっ。あっ」
「なにやってんだ。ほらっ一矢」
ジャージ姿でプールにダイブしそうな僕の手を掴むと、一矢先輩は力一杯、引き戻してくれた。
「あ、ありがとうございます。……。なにニヤニヤしてんすか?幸矢先輩」
「ナルシスト」
「なっ」
「自分に見とれる暇があるならさっさと掃除終わらせてくれよ」
「そんなんじゃ」
「いくらキレイな顔してるからってさ」
先輩がポソリと呟いた言葉に、おどろく。
今先輩。……なんて。って!
先輩が僕の顔を覗きこんできた。めっちゃ、近い。
「そばかす。あんだな」
「いけませんか?」
「んなことないよ。似合ってる」
先輩の大きな瞳に。
「一矢?」
吸い込まれそう……。
「ん」
気づいた時には、キスしてた。
唇が触れた瞬間、先輩の体がプルってなった……。やっべ、カワイイ。
幸矢先輩の手が、僕のジャージを掴んだ。離れたがってる?
一矢「先輩?」
それとも?
一矢「幸矢せんぱっ……。んっ」
今度は、先輩が攻めてきた。
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