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放課後。
沈みかけた夕日を眺めながら、僕は屋上で天野さんを待った。
待ってから数分で、彼女は少し挙動不審になりながらも屋上へやってくる。
何だろう、こんな天野さんは見たくなかった気がするな……。
「すまないな、こんな所まで呼び出して」
「だ、大丈夫だよ。どうせ部活にも入ってないし、暇だったから」
とは言ったものの、好きな人と二人きりなんて緊張するに決まってる。
お互いの言葉がたどたどしいのは、もうお互いにわかってるはずだ。
先に口を開いたのは、天野さんだった。
「授業の時はすまなかった。だが、君に頼みたいことがある」
「頼みたいこと?」
まだ天野さんは、目が泳いでいる。
少し口元が震えてるが、次に発した言葉が逆に僕を震わせる驚きの言葉だった。
「わ、私に……男の子について教えてほしいのだ……」
「えっ……えぇぇぇぇぇぇ!?」
お、男の子についてって……。
いろいろぶっ飛びすぎてないか!?
頭の中で混乱する中、さらに天野さんは言葉を続ける。
「い、いやっ別に変な意味ではないのだ。ただ私は、男の子が怖くて触れる事が出来ない」
「男の子に、触れられない?」
「そうだ。だからペンを拾ってくれたあの時、君の手に触れる事が出来ず拒絶してしまったんだ」
あの完璧だと思っていた天野さんに、まさかそんな弱点があったとは思わなかった。
嘘をついている様には思えないし、しかも男について教えてくれなんて……。
これはチャンスかもしれない。
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