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「天野さん!!」
僕は叫んで、気付けば彼女の手を握っていた。
驚いて目を丸くした天野さんを、じっと見つめる。
数秒。
長く感じたその数秒の後、僕が口を開く。
「ずっと、天野さんが好きだった」
「……えっ?」
「天野さんの頼みを引き受けたのも、こうしていつか君に触れられると思ったから」
天野さんは黙ったまま、僕を見る。
だけど、手を放す事は無かった。
嫌がる事も、怒ることも無く。
そして彼女は、静かに笑った。
「不思議な感覚だ。今まで男の子に触れられると、気分が悪くなったりしたんだが……君に触れられても、何とも思わない」
「じゃあ……」
「私の頼みは、これで終わりだ。短い間だったが、すまなかったな」
あぁ、終わってしまう。
2人の時間が、ついに終わってしまう。
僕が頭を抱え、目を閉じた瞬間だった。
唇に、柔らかい感覚が走る。
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