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半年前
埼玉県の浦川西高校は県内で有数の進学校として知られており、他にもサッカー部等の運動部が県大会や全国大会に出場しているという実績があり、まさに文武両道といわれている。
「堺はまたサッカーの本読んでるよ。」
と賑わっている教室からヒソヒソと女生徒に向かって言っている男子
「もう…あれから半年も経ったんだな」
と他の男子もヒソヒソと言っていた。すると女生徒は本を閉じて、立ち上がり教室を出ていった。
すると二人の男子から笑い声が聞こえた。
「ふざけんな」
廊下に立ち止まりそう呟いた。
あのときの事は忘れられない。部室で首を吊っている自分の兄の姿を見て背筋がゾッとした。あの時の兄の顔と床に置かれたボロボロのスパイクは今でも忘れられない。
兄の話をされると嗚咽が止まらない、気分が悪くなりトイレへ駆け込んで調子を整える、ふらふらになりながらトイレを出ると、女生徒に話しかけられた。
「あんたはまた幸村先輩のこと思い出したの?」
と少し呆れながら問い掛けた。
「片桐…」
私は黙ってしまった。言い返そうとしたが事実だし、気分が悪い。
「もう半年経つんだよ、もういいんじゃない?」
そんなことを言われて
「忘れようとしても頭の中で蘇るのよ!何度も!何度も!」
感情が抑えられなくなってつい怒ってしまう
「ごめん。無神経だったね…」
少し表情が曇った彼女を見向きもせずに歩いていく。
これは自殺した堺幸村の妹、堺香織が真実に向き合うまでの物語
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