「劣化」

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「劣化」

キツいことを平気で言うパートナーだとはわかっていたが流石にこれは堪えた。 「最近、劣化が激しいね。肌も顔も。」 確かに30代に入って張りとかは少しずつ無くなって来たって実感はあった彼女だった。しかしそれを「劣化が激しい」などと言われてはかなり傷付いた。もっと言い方があるだろうに...。 「補修するにはもっとエイジングケア専門の化粧品、いや医薬品じゃないとダメだな。とにかく劣化を緩やかにしないと。」 また劣化と言った。さらには補修だなんて...。面食いだから私の顔が好きで結婚して欲しいってのがプロポーズの言葉だったのに。 「ん?気に障ったようだね。でも僕は君の顔が好きで結婚したんだからそれが壊れちゃ意味無くなるだろ?」 しっかり覚えてるのね。でも、崩れる?意味が無くなる?そこまでデリカシーが無かったなんて...。 「わかりました!補修に努めます!」 「わかればいいんだよ。」 嫌味を込めて言ったんだけどスルーなのか?本当に私が従順に聞いたと思ってるのかな?どっちでも変わらないけど。 そして彼女はネットでエイジングケアを検索して効き目が有りそうな物を買い漁った。 一ヶ月後~ 「いろいろ試してるみたいで黙ってたけど、劣化は加速してるね。」 「張りとか艶は明らかに増えたわよ!」 「そういう誤魔化しの話しじゃないよ。細胞自体が衰えてるのがはっきりわかるってことだよ。」 「それは年齢を重ねてるんだから当たり前でしょ!解決策って美容整形とかしかないでしょ!」 「美容整形...。それがいいかもね。」 「本気で言ってるの!?」 「もちろんだよ。君の顔が崩れちゃったら君の存在意義は消滅だからね。」 「ひどいわ...。そんな言葉、あり得ない...。」 泣き出した彼女に言い訳ひとつもするのではなく彼はさらに言い放った。 「ほら、泣くってことは僕が正しいってことだからだよ。さらにその事実が君も悲しいってことだよ。」 頭が痛い。それにしてもおかしい、いくらキツいことを平気で言う人でもあまりにも酷い。 そういえば完全主義者なのに最近、物忘れが増えてるわ。若年性認知症とか? 劣化してるのは彼の頭脳の方だった。
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