「嗚咽」

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「嗚咽」

「何回言えばわかるんだ?それは嗚咽じゃなくて絶叫なんだよ!それじゃ感じないんだって言ってるだろ!」 だって敏感なんだから我慢できないで絶叫しちゃうんだから仕方ないじゃない...。嗚咽じゃ止まらないよ...。 別に近隣に配慮してではない。隣までは百メートルは離れている農家の若夫婦の二人である。 何故、彼が嗚咽に拘るのかは何度も聞かされた。 母親が早死にし父親が後妻に迎えた妖艶な女性が中学生の自分に配慮して父親との行為中、我慢して嗚咽を漏らしていたのが彼の性の目覚めだったからだ。 「感じるのはいいけど声は我慢出来ないか?どうしても無理ならタオルでもくわえてみるか?」 そんなプレイは嫌だ。強引にヤられてるみたいじゃない...。 「どうしても拒むんなら、そういう店で猿ぐつわみたいなの買って来るよ。」 いくら私が惚れて農家にUターン就業する彼に望んで付いて来たとはいえ、僻地の数少ない楽しみの夜の生活でここまで我が儘を通そうとするなんて...。 彼女が強引なヤリ方に拒否感を覚えるのには理由があった。 夫にも誰にも言っていない、言えないことだ。 大学生の頃、実家から通っていた彼女には同じく実家から通勤している二歳離れた姉がいた。休日には姉は社内恋愛で婚約者の男性をよく家に呼んでいたのだった。 出掛ける用事も無かった休日に姉は彼と部屋に籠っていた。両親は出掛けていて家には三人だった。気まずいし遠慮した方がいいだろうと彼女も外出する準備を進めていた時だった。部屋をノックする音がして姉が呼ぶ声がした。部屋を出るといきなり口を塞がれ姉の部屋へと連れ込まれた。婚約者の男の仕業だった。驚いた表情の彼女に姉が告げた。 「最近マンネリだからね、彼があなたも一緒に三人でしたいって。いいよね。」 有無を言わせず二人がかりで犯されたような形になった。 その後すぐに家を出て独り暮らしを始めたが、姉と男は結婚して実家で両親と同居を始めたから盆や正月に親に呼ばれても一度も帰っていない。帰れないのだ。 どうしても夫がプレイを迫るならこの事を打ち明けても拒まなければ自分が壊れてしまう。 それでも迫る夫に話したくないこの話しをしなければいけない状況になった。 聞いた夫は嗚咽を漏らした。
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