「制裁」

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「制裁」

間借りしないかとの友人の持ち掛けた話しに彼は乗った。どうせ仕事と遊びで眠りに帰るだけだし友人も減給で家賃に困っている様子だから2~3万円でも払ってやれば助かるだろうし自分も部屋を借りたりするよりずっと安上がりだ。友人は在宅が主な勤務形式のプログラマーだから基本的にその部屋にずっと居るし、自分は朝早く出掛けて帰宅は日付けが変わってからばかりだ。それで上手く行っているはずだとばかり思っていたが友人は不満があったみたいで休日に顔を合わすと文句を箇条書きにして連ねて告げて来た。 「そんな不満ならもっと早く言えばいいのに。」それならこうして週に一度は時間を作ることにして改められることは改めるように決めた。それでも翌週には次々とまた文句ばかりだ。彼はふと考えに至った。「君は基本的に仕事場がここだし、ずっと独り暮らしだった。だから外部から来た僕が居ること自体が不満なんだよ。少し目についたことでも全部自分の思うようにならないと不満なんだよ。」 「そうだな。何故こんなにイライラするのかもわからなかったが言われてみるとその通りだ。君が出掛けている間も居るような気がして落ち着かないんだ。」話し合いの結果、二週間後には新しい部屋を見つけて間借り解消ということになった。しかし翌日、仕事の後に恋人と飲んでから帰ると友人は「今すぐ出て行ってくれないか。」突然言い放った。いや、用意をしていたらしく荷物はまとめられていた「いいか、今から出て行けよ。」 そう言うと部屋のベッドに入り灯りを消した。わかった!楽しそうに日々を送っている自分の生活への嫉妬なんだな!でも話しついてるのに急になんて許せないな。しかし、ここに居座るのは嫌だ。 そうだ...。軽トラックを持っている同僚を呼び出し部屋の物の他にテレビ・レコーダー・カーテン・LED照明・電波時計・電子レンジ・冷蔵庫・インスタント食品など必要な物を片っ端から荷台に積み込んだ。彼は寝静まったままだ。ここまでとは思わず寝た振りをしているのだろう。合鍵を置いて部屋を出た。翌日にはトランクルームを借りてとりあえず全部押し込んだ。 「何やってんだよ!生活できないじゃないか!」電話して来た彼に告げた。 「生活できないのはこっちの方だ。思い知れよ。全部慰謝料代わりに貰っておくよ。」
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