「sleep」

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「sleep」

その男は眠らない。 不眠症ではない、一定の割合で存在する「無眠者」という特異体質なのだ。起きていても眠っているのと同じ状態を作り出せて脳を休ませることが可能なのだ。 肉体的には脱力さえすれば眠っていなくても疲れはとれる。 この体質だと何かと便利だ、勉強も仕事の準備も遊びも恋愛も睡眠時間を一切気にせずにしたい放題なのだ。 普通の人間ならば人生の3分の1の時間は眠っているとされるが彼はそれだけ得をしていることになる。いくらお金を積んでも買えない時間というモノを手に入れているのだ。 情報を貪る暇がふんだんに有り人間としての豊かさも持ち合わせているのでモテるし仕事も順調だ。 ただひとつ問題なのは恋愛に於いて毎回起こる課題がある。 どれだけモテても相手は自分の好みで頑張って交際にこぎつける。気持ちは最高で体の関係に発展すれば天にも昇る悦びだ。 しかしながら、宿泊となると眠らない体質がすぐにバレてしまう。彼女がいつ目を覚ましても起きているのであるから。ずっと寝たふりなど無理なのだ。 そうなると自分が眠っている時間に彼が何をしているかどうしても気掛かりになってしまう。 女性のいる店、キャバクラやスナック・ガールズバーに飲みに行っているのではないか? さらには浮気してるんじゃないか? そこまで必ず疑われてしまう。 浮気なんかしてないとどれだけ言っても「していない」という証明は難しくて結局ギクシャクしてしまい別れる羽目に必ず行き着く。 毎回とてつもない虚無感に囚われる。 こんな悲しげに生きるより眠りたい。 最近は睡眠薬を飲んで無理やり眠るようにしている。
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