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翔の体調を気にしてか、今日は午前中の部で帰すことに。
「少しは良い刺激になっただろう…ありがとう、翔」
「なぁにいいってことよ。必要とあらば今んとこ暇人だからいつでも声掛けてくれや」
翔本人も他の者にちょっかいを掛けたりと気分転換ができ、満足げに演習場を後にする。
再び城内へと戻り、窓から見える城下町を眺めつつ自分の部屋へと向かう。
城内の者も翔のことを知っており、見掛けては声を掛けたり、中には敬礼をする者まで…。
そしていざ自分の部屋へと戻ると、ベッドに踞ってる金髪赤眼の何かがいた。
見間違いか、又は入る部屋を間違えたのだろうと思い扉を閉めるが、部屋の位置は間違ってない。
溜め息を一つ吐いて翔は再び扉を開ける。
「んーパパの匂いがする……」
「なぁにやってんだウリエル」
「ハッ!?」
慌ててベッドから飛び降りるも時既に遅し。
突っ込みたい部分が色々あるが、それはさておき…。
「何か用か?」
「ゼウス様が呼んでるから迎えに来た。あとついでにパパの匂いを嗅ぎに来た」
「いやそれ俺の匂いだし。初めてだぞそんな風にガッツリと嗅がれたの」
「てへ」
「親父も大変だったんだろうな…」
と、ぼやくが、それよりもゼウスが呼んでいるとなれば理由は一つ。
エリクシルでも回復しなかった魔力のことだろう。
別に早急にどうにかしないといけない訳ではないと思うが…ラファエルはこの事を知ってるのだろうか?
「ラファエルは知ってるのか?」
「ラファエル先輩にはゼウス様から念話を送ってるから大丈夫」
「なら良いか。じゃあさっさと頼むわ」
「えー…もうちょっと…」
「 ダ メ だ 」
うすら寒い何かを感じた翔は少し強めに言い放つ。
ウリエルは口を尖らせ何かぶつくさ言ってるが気にしないでおく。
「じゃあ行くよ」
部屋の天井に純白の魔法陣が描かれる。
転移を伴うその魔法陣が眩い光を放つと共に訪れる浮遊感。
塗り潰された視界が再びはっきりとする頃には、足下が雲で覆い尽くされている天上の世界。
天使が住まう天界へと招待された。
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