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天界の宮殿。
翔の元いた世界で言えばヴェルサイユ宮殿に似た建造物。
そこにある謁見の間…彼は壇上にて威厳を放ち、王座に座っている。
波打つ白銀の髪とその威厳を更に際立たせる同色の髭。
こちらを真っ直ぐに見つめる黄金色の瞳は壮麗さを伺わせ、座っていながらもそのしっかりとした体躯はまるで名工が渾身の一作である彫刻のよう。
今目の前に広がる光景が一枚の絵になっても不思議ではない。
天界の長ゼウスは、ウリエルが膝をついて頭を垂れた後、口を開いた。
「ご苦労だったウリエル…そして、よく参った…聖の息子よ…私がこの天界の長ゼウス…お主の父、龍崎 聖と【盃】を交わした唯一の親友(とも)だ。」
【盃】………。
その言葉は翔が知る言葉の一つで、それだけで二人の関係性を理解した。
「はい、私が龍崎 翔。招待して頂き、至極光栄であります」
父が世話になった者に対しての礼儀か、珍しく丁寧な口調で話し、ウリエルと同じく片膝をついて頭を垂れた。
「面を上げよ。主は私の息子も同然…好きに振る舞うといい」
「そう言うならば…」
今だそのままの姿勢を崩さないミカエルを横目に立ち上がった翔。
いつもの状態に切り替え、今度はこっちから話を始めた。
「親父の件は、本当に済まなかった。完全に俺の力不足だ…」
真っ先にそれを言いたかったのだろう翔はまた頭を下げ、父の【兄弟】 に謝罪する。
それに対してゼウスは目を閉じ、ゆっくりと首を横に2往復。
「聖が選んだことだ。主の言うことも分かるが、逝った聖にそれは失礼だぞ?」
「………」
「それを受け止め、前へ進め。それが託された者としての務めであろう?」
「………ああ」
短く返し、再び顔を上げた翔。
顔は違えど、どこか父親の雰囲気がゼウスから感じられた。
胸に込み上げた熱いものを堪え、一つ深呼吸をして自らを落ち着かせた。
「ウリエル、お主ももう良いぞ」
「はい」
と、ウリエルも立ち上がり、二人が立ったのを確認してからゼウスは今回呼んだ理由について話し出す。
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