第一章 サンタクロースの絶叫

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そんなことを思いながら、冷蔵庫から取り出した目玉焼きを食べたいななどと考えつつ、醤油をも取り出す。 目玉焼きといったら醤油だろ、といった拘りを心の中でぼやいて食卓へと俺は向かうのだった。 ーーーーーー 食事を済ませた俺はカーテンを開けた。 キラキラと光りながら太陽光が俺の方へと入ってくる。 うう、まぶしいといいたげに目を細めその先の庭を見た。 庭、といっても少しの花壇と少し広めの芝生があるぐらいでそこには他に何もない。 あとあるといえば葡萄の木があるのみで、俺は呆然とそれを眺めた。 子供の頃のことを、何故か今思い出す。 木の上にある葡萄を食べたくて、何人かの友達と遊んでいる時にその木にぶつかってしまい、頭から血を流して救急車で運ばれたことを。 あの時側にいた看護師かわいいかったななどと、あの頃は思いもしないことを今思って妄想に耽る。 (すっげーかわいかったなあの看護師。日本人とは思えないやや金髪がかった巻き毛に澄んだ茶色の目。また会いたい。でもまてよ、あの時かわいかったってことは今おばさんじゃないか。終わった、気持ち悪い妄想取り消そう) 急にこみ上げてきた吐き気を抑えるように鳩尾を指で押し、ふぅと息を吐いた。 朝食をとってからこんな吐き気がしたら、目玉焼きになっちまうとかなんとか思いながらコーヒーを注ぐ。 コーヒーは素敵だ。 どの辺が素敵かというとこれはもう答えられないので知る人しか知り得ないものということにしておこう。 黒く、一点の濁りもないその液体は俺の顔を水面に映す。 喉仏がそれを欲するかのように上から下へと動いた時にはもうそれを胃袋の中に入れた時だった。
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