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もう一度言う。
桜庭錦二十八歳、独身。彼女たちの言う通り、帰国子女で四カ国語マスター済みのT大卒の男だ。
外見もさっき噂されていた通り、イケているらしく、クールだが優しさのある良い感じの男らしい。
そういう部分が先行してか、必ず付き合う女性の理想は高そうだの、敷居が高そうだの近寄り難いだのなんだの言われてしまう。
だが、
決して、そんな事はない。
寧ろ、その逆だ。
食事?
バーでお酒?
ウェルカムだ。
ぜひ、誘ってくれ。
クールぶって見えるそうだが、実は俺は―…
こう見えてめちゃくちゃ奥手だ。
今、給湯室のドアをノックするのにもかなりの精神力を消耗した。
現在交際中のハイレベルな彼女なんていない。というか、彼女という存在自体いない。
業務上に関する話なら出来るが、それが個人的な、ましてや恋愛が絡みそうな事になると物言わぬ貝状態になってしまう。
女性に対してのアプローチの仕方がわからないし、そんな俺に、女性達から来てくれないと特別な関係になんて発展する訳がない。
T大受験や司法試験よりも難しい。
自分にとって恋愛とはそういうものだ。
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