1、弁護士桜庭センセイの秘めごと

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1、弁護士桜庭センセイの秘めごと

「聞いた?桜庭先生、もう例のクロスボーダーの案件まとめちゃったみたいよ」 「T大卒だし、帰国子女で四カ国語ペラペラって話じゃないですかぁ~A銀のリテールバンク事業の売却も早かったですよねー!」 「あの若さで大きな案件でどんどん実績積んでるとか凄いわよね」 「高学歴、高収入。その上、イケメンっ!!」 「完璧すぎ~!彼女、というか嫁として立候補した~い!!」 クライアントとの打ち合わせを終え、給湯室に飲み終えたコーヒーカップやソーサーを下げに行くと、そんな会話が聞こえてきた。 そのまま中へ入れず、ついドアの手前で隠れる様に立ち止まったままになってしまう。 「立候補?なに言ってんのー、あれ程のレベルだよ?付き合う女性だって遥かに高レベルに決まってるってーもしくはもうハイレベルな彼女持ち」 「やっぱりそうですよねぇ~桜庭先生レベルだと〝あわよくば”さえ望めないっていうかぁ、食事さえ気軽に誘えないですよねぇ」 彼女達が今、会話で盛り上がっている〝桜庭先生”というのは、 まさしく桜庭錦二十八歳、独身の俺のことだ。
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