紅葉と白い鳩

2/3
前へ
/3ページ
次へ
天高く澄み渡る青空。 紅に黄に、色づいた街路樹。 踏むとカサカサと、乾いた音を立てる落ち葉。 風が心地よく冷たい。 秋だなあと、柄になく、季節感に浸ってみる。 ふと前を見ると、秋らしい赤いマフラーの女の子と、彼女にリードを引かれた茶色い毛並みの仔犬が、この景色に合わない白い鳩たちをじっと見ていた。 のどかだ。 と、思った瞬間、 ふえっくしょん! 思わず、くしゃみ。鳩が飛び立つ。 「あ!鳩たちが」 女の子が立ち上がる。 悪いことをしたな、と後ろめたさを感じながら、通り過ぎようとした時、少女がぽつりと言った。 「どうしよう。芦田君からの手紙、受け取り損なっちゃった」
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加