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天高く澄み渡る青空。
紅に黄に、色づいた街路樹。
踏むとカサカサと、乾いた音を立てる落ち葉。
風が心地よく冷たい。
秋だなあと、柄になく、季節感に浸ってみる。
ふと前を見ると、秋らしい赤いマフラーの女の子と、彼女にリードを引かれた茶色い毛並みの仔犬が、この景色に合わない白い鳩たちをじっと見ていた。
のどかだ。
と、思った瞬間、
ふえっくしょん!
思わず、くしゃみ。鳩が飛び立つ。
「あ!鳩たちが」
女の子が立ち上がる。
悪いことをしたな、と後ろめたさを感じながら、通り過ぎようとした時、少女がぽつりと言った。
「どうしよう。芦田君からの手紙、受け取り損なっちゃった」
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