練乳小豆団子

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戻りましょうと声を掛けられ、少し後ろ髪引かれる思いだったが、達者で暮らしてと声を掛け扉に向かう。 背を向けた瞬間に何かが近づき襟元を引っ張られた感覚がしたが、ハッとした時には遅く、巨大犬に襟を咥えられ猛スピードで走り始めた。 「ーー百合さんっ!」 田村さんが双棒を持って攻撃してくれたが、サラリと交わし、走るスピードが速すぎ目も開けていられない。 「田村さーん、助けてぇぇーー!」 言ってみたものの遥か彼方で姿すら見えず、小枝に当たったり草を弾いたりで、顔を手で覆うのが精一杯だ。 「お前ら恩を仇で返しやがって、子犬も帰してやったのにフザけんなよ!」 襟を咥えられたまま、走る犬に怒鳴ってみたが全く聞いていない。 首元も締まってきて苦しいし、スピードで目から涙も出るし、止まるまでジッとしているしかないみたいだ。 走ってどの位経っただろう、不意に放され地面にポトッと落とされた。 「イタタタ……」 涙を拭って周りを見ると、広い空地のような場所に色んな大きさの犬が周りを囲んでいて、後ろを振り返ると先程の二匹もいた。 「処刑でもされるんですか?まぁ言葉が通じないなら、残念だけどこちらも抵抗するしかないね」 双棒に手を伸ばし息を整えたが、普通こんな状況だと怖くて声も出ないし一斉に襲いかかる恐れもあるのに、心の準備は整っていた。 「驚かせてしまい、申し訳ありません」 声がして振り向くと犬が道を開け誰かが近づいて来たが、顔は犬で二足歩行なので、今までの依頼主で見た事あるパターンだ。 「ここのトップの(がい)です。仲間を助けて頂いた上に、子犬の面倒までみて貰い有難うございます」 「礼ならもっとソフトに言って貰えます?」 「仕事の依頼ではありませんし、助けて頂いた犬種は人の言う事を聞くタイプではないので、お会いしてみたくて」 口が耳のあたりまで裂けていて、恐ろしい形相なので見た目だと悪者にしか見えず、普通に会話しても背筋が凍りそうに怖い。 お礼と見せかけ餌として食べるのではと思えてしまうほど、金色の目は不気味な光を漂わせていた。
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