練乳小豆団子

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「なるほどイザリ眼をお持ちなんですね、あの蜂は、ルール違反を犯して困ってたんですよ」 物言いは丁寧だが目がギラついていて『八つ裂きにしようと思ってた』に変換され聞こえてしまいそうだ。 「おかげで今まで通り生活出来ますし、依頼者がどなたか知りませんが報酬をお支払いしたい位なのに、そちらは何も言ってきませんでした」 「ラッキーと思って、黙っておけばいいですよね」 たまたまターゲットが一緒だっただけなので気にしなくていいし、私だったら絶対に口を閉ざしておく。 「変な借りを作りたくないんですよ、あなたは何か欲しい物はありませんか?」 こんな恐ろしい悪魔から何か貰うとおまけで呪いまで付いてきそうだし、今の希望と言えば生きて無事に帰りたいしかない。 何もいらないので、元の場所まで送って貰えませんかと提案したが、相手は黙ったままで納得がいかないようだ。 「報酬の交渉なら申し出て頂ければ良かったのに、相変わらずお茶目な事をされますな」 犬の軍団の後ろから社長と田村さんと滋兄が姿を現した。 「もう見つかりましたか、ではほんの気持ちとして、このお守りと子犬を引き取って貰えませんか?きっとお役に立ちますよ」 「せっかく帰しに来たんですし、山で自由にさせてあげて下さい」 「その子が、そちらがいいと言うのでお願いします」 そう言うと踵を返して歩いて去ってしまい、犬もゾロゾロと後をついて行くと、私達だけポツンと取り残された。 「平和に片付いて残念だなぁ、田村が必死に呼ぶからワクワクしてついて来たのに」 「あの悪魔は気が変わりそれもあり得るからね、でも百合さんにもしもの事があれば、私達が瑠里さんに皆殺しにされますよ」 少し目を細め社長はタオルを差し出すと、顔に血がついてますと拭くように勧めてくれた。 顔を押さえ地面に置かれたお守り二つを見ると、恐らく一つは妹の分だと思われた。 「怖い思いをさせてすみません、配慮が足りませんでした」 田村さんが肩にそっと手を置くと、安心したのか急に涙がポロポロ零れ落ちた。 「田村さりげなくセクハラ?百合さん嫌がって泣いてますよ」 ちょっとホッとしただけですと慌てて訂正し、ゴシゴシと顔を擦り誤魔化して社長達の後に続いた。
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