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左右に開くドアから戻り全員で消毒の突風に煽られると、そこからシャワー室に行き、男性達も逆方向に行ってしまった。
温かいシャワーを浴びると、顔はピリッと痛むがやっと安心する事が出来た。
そう言えば社長のつなぎの刺繍は金や紫等が混ざってたし、滋兄は金刺繍で田村さんは紫だったので、お休みの日は上の人が工場に来てるのかと考えていた。
「あ、結局妹の予想当たってた」
髪を乾かしロッカーで着替えを済ますと、受付に荷物を預けたが、この男性が下着も用意したのかと思うと少し恥かしくなってくる。
「ちょっと休憩して帰りませんか?」
社長が声を掛けてくれ部屋に案内されると、他の二人はパンとコーヒーを飲んで寛いでいたので、田村さんの隣に座りパンに手を伸ばした。
「正月は交代でここに来ますがヘルプに出たのは初めてです、ホント百合さん達といると退屈しませんな」
こっちは死にかけてたかもしれないのに、そんな言葉で片づけられても苦笑いしか出ない。
滋兄は塗り薬を渡してくれ、すぐに消えるからと勧めてくれたが、その顔で家に帰るとお母さんがビックリするよと言われ慌ててつける。
確かにパン工場で顔に擦り傷が出来る事自体おかしいと妙に納得していると、ハッハッと足元から息遣いが聞こえ子犬と目が合う。
パンをくれと言わんばかりに膝の位置まで来ていたので、少しちぎるとすぐに食べて次の催促が始まり、将来的にドラム缶体型にならないかと心配になる。
「その子犬鳴かなくて利口ですね。仕事に連れて行くなら『しつけ』を専門の者に任せる事が出来ますが、山金犬は初めてな気がします」
「次の仕事までならワシが引き受けてもいい、イザリ眼や双棒で百合さんと共通点も多い」
社長に預けると性格が性悪になりそうな気がするし、おまけに仕事に連れて行くとはまだ一言も言ってない。
「じいさんは忙しいから俺がするよ、五日までなら何とかイケる」
「お前に出来るのか、般若と大蛇の息子だぞ?何かあったら大変な事になるんだぞ、冗談が通じないんだぞ!」
私達の事をなんという言葉で伝えてるのかと変な汗が出そうだし、誤解を招くので止めて欲しい。
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