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「俺は般若も大蛇も好きだけど?じゃあ、この犬は鐘馗ってとこかな、名前はつけてるの?」
「妹がイナリと呼んでました」
「まさかとは思うけど、稲荷寿司が語源じゃないよね」
その通りですと言わんばかりに沈黙で返すと、皆が静かになったので、この犬には本来相応しくないのかもしれない。
「まあ飼い主の自由だけど一応山金犬だからね、山を守る神様として崇められ、鬼退治するとも言われてたからさ」
私はイナリでも鐘馗でもいいが、恐らく妹の中では決定してる気がする。
どちらにしても何となくこの人と関わりを持つのが怖いので、これならまだ社長に頼みたい位だ。
「あなた方にはクセある人が寄ってきますね、八雲や滋はあまり人に興味ないんですが、これは女性という特権ですかね」
「女性は勿論だけど才能かな、この子達きっと俺らをビックリさせてくれるよ」
過度な期待は止めて下さいと訂正はしたが、この人達も話を聞かないタイプなので、伝わったかどうかは不明だ。
犬は五日の夜に返すと懐に入れ部屋を出て行ってしまい、田村さんに視線を送ると苦笑いしていて、この中で唯一話を聞いてくれるのはこの人だけだ。
滋に楽しみを取られてしもうたし、仕事に戻るかと社長も後に続き部屋を出て行く。
「大丈夫なんでしょうか、あんな危険そうな人に任せて」
「恐らく大丈夫でしょう、百合さんも帰って休みの間体力温存させて下さい、トレーニングに来るのは自由ですし誰かは居ますので」
田村さんと一緒に部屋を出て受付まで戻ったところで、リーダーの顔が見え驚いて挨拶をした。
「俺はちょっとトレーニング、アンタも?」
「いえ、もう帰ります」
これ以上巻き込まれたくないので逃げるようにその場を立ち去ると、家までダッシュし早く帰って落ち着きたい一心だった。
「遅かったね、イナリ山に帰ったの?」
妹がリビングでコーヒーを準備し目の前に座ると、母はお風呂に入っていたので、今までの出来事を手短に説明しお守りを渡した。
「なるほどでも名前はイナリでいいよね、仕事に連れて行くのは何か理由があるのかな?家にドラム缶といるのは危険とか」
そこまでは聞いてないが、危険な犬と言ってたので普通には飼えないのかもしれない。
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