蛙饅頭

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「殺すというよりは『消滅させる』と言った方が相応しいかもしれません」 田村さんもサラリと返し、おまけに笑顔なのも考えが読めず不気味だ。 「私達が切ったり撃ったりした者は、灰となり消えますので死骸も残りませんし、その世界の依頼者しか何が起こったのかも分かりません」 悪者を陰で葬ると言ったところだろうか。 それに気になるのは、さっきの壁とか針金みたいな物を出したのに、体力も消耗してないし身体も痛くない。 「因みに持ち込みが禁止なのは、その世界から帰ってきた際、ウチですべて消毒するからです」 あと社長への土産は新商品の参考の為で、異世界は斬新な物も沢山あると説明が加えられた。 ぎこちなく頷くしかなかったが、田村さんは立ち上がり、トイレを済ませて来て下さいと、場所を教えてくれた。 休憩がいつになるのか分からないので、しっかり済ませておきたい。 手を洗って部屋に戻ると、田村さんは黒いリュックを二つと防弾チョッキ等を準備していた。 『これ、やっぱ何処かへ行く支度だよね』 急にソワソワしていたが、妹はつなぎのファスナーを下ろし、黙ってチョッキを身につけている。 つられて持ちあげてみると、思ったよりずっと軽くて薄かった。 「これが貴女方のリュックです」 黒のナイロンリュックも比較的小さめで、私でも軽々と背負える重さだ。 妹は荷物の少なさに納得がいかないみたいだったが、背負って動くなら軽い方がいい。 「あとこのベルトを腰でも背中でも巻いて下さい、双棒をしまうケースです」 着々と支度が整って行くがこれからの予定が気になりながら、ベルトを腰に巻き終える。 「今から仕事に行きますが、相手は六匹なんで一人のノルマは二匹です。今日は私がお供しますので、要領をよく見ておいて下さい」 『匹ってどういう事?!』 田村さんの背中について行き、緊張と戸惑いで吐き気がしそうだが、妹の顔も少し強張っている。 資材用ぐらいの大きなエレベーターに乗ると、地下五階のボタンを押すのが見えた。 扉が開くとパン工場の趣は何処にもなく、通路には監視カメラやハイテクな設備があり、全体的に白で明るい。 そんな中黒の私達はよく目立ち、所々に光が走っているが何の為なのかは全く分からなかった。
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