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蛙饅頭
「いや、ここまでだとは。新しい人材の将来は有望で、姉妹なので息もピッタリだし、最強のパートナーになれます」
彼は薄っすら涙を浮かべていて、見かけとは違い涙もろいのか、それだけやる人が少なくこういう作戦にでているのかは不明だ。
でも妹はすっかり気に入ったようで、あれこれ試している。
「百合さんは回数を重ねれば手が負えなくなります。ふふっ、あーっははっ!楽しみすぎます」
興奮する田村さんの表情を見ると、楽しみと言うより気分が悪くなりそうで帰りたい。
「仕事日はこのベストも着て、あとこちらの準備したリュックは、着替えや必要最低限の物を詰めてあります」
ガイド口調の説明も始まり、何だか嫌な予感がしてくる。
「持ち込みは不可ですがこのカードは使えますので、急な宿泊や食事は勿論、必要な時にお使いください。あと社長から頼まれる土産もそれで支払って構いません」
旅行に行く訳じゃないのに何で必要なのか分からないが、徐々に早口なのは今から出かける気じゃないよねと確認したい。
「忘れてました、このタブレットとスマホも支給ですが、特殊なのでどこからでも繋がります」
「まだ少し時間があるので、コーヒーでも飲んで落ち着いて、トイレを済ませたら次に行きましょう」
部屋から田村さんが居なくなると、早速妹に話しかけた。
「やっぱり怖いよ瑠里」
「いや死にかけたの向こうだけどね、私は結構気に入ったかも」
「工場で働けるかの返答スル―されたよ?確認出来てないままだし」
その場にしゃがみこみ、今から何が始まるのか考えると気が重くなるが、妹は何でこんなに冷静に受け入れてるかも分からなかった。
田村さんは缶コーヒーを三つ持って戻ると前に置いてくれ床に座る。
「流れを軽く言いますと、まず依頼が入りウチで内容を調査してから始末に入る、だたそれだけです」
始末という言葉が耳に残りつつ、落ち着かせるようにコーヒーを口にする。
「依頼者はその世界の警察的な存在ですが、表向き手を出せない又は手に負えない、そんな厄介な者が対象です」
平たく言うと殺し屋みたいな感じですかと、妹は言いづらい事を平気で質問をしていた。
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